凸レンズを教えているときのこと。入射角と屈折角の関係や凸レンズの作図問題を機械的に暗記し、反射的にペンを走らせていることに気づきました。物理は暗記ではなく、考える学問です。ちょっと寂しい気がしたので、少しだけ本質的な内容を交えて教えました。
凸レンズの問題を機械的に解く長男
・・・えっと、物体から凸レンズに向かってい水平に線を引いて、また凸レンズの中心に向かっても線を引いて、交点が実像っと。簡単だけど、なんの意味があるのだろうか。この作業。。
図 凸レンズの問題を作図した様子
たしかに。この作図が書けることが、どのような科学リテラシーの向上につながるのか。私は答えられませんでした。
光はとても不思議で面白く、この年になっても興味を惹かれて勉強しています。せっかく勉強する光の概念をもう少し詳しく知って、興味をもってもらいたいと思いました。そこで、受験テクニックからは遠回りになりますが、光について少し話をすることにしました。
光のふしぎ
まず、光には速さがあります。光は真空(空気がない空間)で秒速30万kmです。地球の円周が4万kmくらいですから、光は1秒間に赤道の周りを7周以上回ります。地球と太陽の距離は約1.5億kmですので、太陽で水素の核融合反応が起き、そこから発せられる光が地球に「お日様のひかり」として到達するのに8分くらいかかります。
だから、みんなが見ている太陽は、8分前の太陽なんだよ。
え?!・・・でも、光には速さがあって、地球と太陽の間に距離があるのだから、そうなんだね。8分前か。ということは、8分の間に太陽が消えても、気づかないってことだね。
そのとおり。なんか不思議だよね。また、光には早いだけではない特性が他にもあるよ。
たとえば、静止している観測者に向かって時速30kmで車が走ってきているとします。観測者が測定する車の速さは30kmですよね。では観測者が車に向かって10kmで動いているとします。すると、観測者が測定する車の速さは40kmになります。
しかしながら、車を光に置き換えると、どうなるでしょう。同じように観測者の動く速さαが加算されて、光の観測速度は、「秒速30万km + α」となるでしょうか。
答えは「秒速30万km」です。観測者が光源に対してどっち向きに動いていようが、観測者が測定する光の速さは、常に秒速30万kmです。これはアインシュタインの相対論の要請です。不思議です。
図 光の速度を観測する
その理由はお父さんもよく分からない。アインシュタインが提唱した相対論に則るとそのようになる。そして相対論は様々な実験などを通してたくさんの科学者から正しいと証明されている。よって、相対論が正しいのなら、光の速さは変わらない、ということを受け入れるしかないのだと思う。
それから、光のもつ別の特性も話そう。光は粒子、いうなれば小さなつぶとして振る舞う場合があるんだ。そして、その粒子は光子(こうし)と呼ばれます。
(お、興味をもってくれた♪)面白いよね。さらに言うとね、もし光子君が時計をもっていて、一緒に光の速度で動いたとします。その時計を無重力のないところから観察すると、その時計は進まない。つまり、時間が止まってしまうんだ。
うん、理論上はね。でも、質量のあるものが光の速度で動こうとすると、莫大なエネルギーが必要になるので現実的には不可能。でも、光ほど早くなくとも、早く動くと、止まっている人からみた時間は遅くなるんだよ。
これは事実で、特殊相対性理論と呼ばれるもので時間遅れは計算できます。
へー。じゃあさ、ずっと飛行機にのっていたら寿命は延びるの?
うん、計算しないとどれくらい伸びるか分からないけど、ほんのわずかだろうね。それよりも、ずっと機内食を食べなきゃなかったり、運動できないので、ほとんど意味はないと思う。
そうだよね。そんなうまい話があったら、お金持ちの人はずっと空の上にいるだろうしね。
時間の話になったから、ついでにもう一つ。上空にいけばいくほど、逆に時間が早くなります。これは、一般相対性理論といって、地球のような巨大な質量があるものの近くにいると時間が遅くなることが計算できるんだ。だから、地上から離れれば離れるほど、重力の効果が小さくなるので、時間は地上よりも早くなる。
とすると、速度と高度によって、時間遅れと時間の進みがちょうど釣り合うポイントがあるんだね。
お、するどい。そのとおり。おっと、そういえば光の話からだいぶ脱線してしまった。光の話に戻しましょう。
つい長くなってしまいました。子供との話が楽しかったので長文になりました。光の屈折についてはまた続きの話で書きます。お読みいただきましてありがとうございました。
まとめ
- 光は面白い物理的な特徴をもっている
- 光は、「つぶ」として振る舞う性質をもっており、その粒のことを「光子」と呼ぶ
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